生き方のヒントが詰め込まれた一冊
「表現する仕事がしたい！」
（岩波書店編集部編）
岩波ジュニア新書
人と違う個性を
いかに発揮するかが勝負の世界で
仕事を続けていく苦労は
並大抵ではないはずですが、
伝わってくるのは、
表現することへの熱い思いです。
自らの表現のために、
ときに寝食を忘れるほど
没頭する姿は
みなさんの心に…。
仕事柄、子どもたちの進路に
関わることが多くなります。
｢歌手になりたい」、そんな相談も
何度受けたかわかりません。
｢なれるのは数万人に一人ぐらいだよ｣
｢現実ってそんなに楽じゃないんだよ｣
やんわりと
これまでは教えてきました。
でも、この本を読むと、
｢もしかしたら自分にも出来るかも
しれない｣と思わせてくれます。
甘い幻想ではなく、いい意味で。
読むと前向きな気持ちになれる
一冊です。
〔本書の章立て一覧〕
表現するということは
安野モヨコ(漫画家)
ヴァイオリンを演奏する仕事
江口有香(ヴァイオリニスト)
声にみちびかれて
おおたか静流(シンガー)
孤独は絶好のトレーニング
岡康道(CMプランナー)
映画を作る
荻上直子(映画監督)
変わった人形劇、あります
沢則行(人形劇師)
「あー，なんか
オモロいことしたいなぁ―」
茂山童司(狂言師)
表現したくて、いろいろ困る
関口光太郎(現代芸術家)
人との出会い･音楽
長谷川陽子(チェリスト)
無理解と対峙し続ける、ということ
丸田祥三(写真家)
私とギター
村治佳織(ギタリスト)
会社員から映像の道へ
安田真奈(映画監督･脚本家)
私ではなく、私の性質が選んだ
横尾美美(画家)
※詳しくはこちらから(岩波書店HP)。
この本には、漫画家、
ヴァイオリニスト、シンガー、
CMプランナー、映画監督、
人形劇師、狂言師、現代芸術家、
チェリスト、写真家、ギタリスト、
映画監督･脚本家、画家、
全部で13人の
｢表現する｣仕事に就いている人たちの
声がつまっています。
この仕事に就くことの
できた人たちの声なので、
どうしても｢やれば出来ますよ｣的に
なってはいます。
また、半数の方の親は
やはり同様の仕事です。
特に楽器奏者の3名の方は
音楽家一家という
特殊な家庭環境の賜でしょう。
しかし、｢なるほど｣という点も
多くあります。
「表現する仕事とて、
サラリーマンになって
毎日会社へ出社して
仕事をするのと本質的には
あまり変わらないのです。
自分の一番好きなものを
仕事にするというのは、
一番大きな趣味が
なくなると言うことです。｣
（狂言師･茂山童司）
「とりあえずの友だちが
いることに安心したりするよりは、
孤独のなかで
思いきり自分に絶望したり、
世界に絶望したりして
いいと思います。
見えない世界に向かって立つって、
そういうことではないでしょうか。｣
（岡康道･CMプランナー）
個人的には映画監督･脚本家の
安田真奈さんの部分が気に入りました。
彼女はOLをしながら
映画をつくった方でした(現在は退社し、
子育てと映画制作の二足わらじ)。
できることからスタートすることは
大切だと改めて感じます。
振り返ると私も｢作家｣になりたいと
思っていた時期がありました。
中学校2年生くらいだったと思います。
｢なり方｣などわかろうはずもなく、
今に至っています。
今となっては読む側で
十分満足していますが。
生き方のヒントが詰め込まれた
岩波ジュニア新書の一冊です。
ぜひ進路に悩んでいる
中学生に読んでほしいと思います。
もちろん、生き方に悩んでいる
大人のあなたもどうぞ。
（2020.3.27）
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